FIREの「RE」の意味と生涯現役

FIREの「経済的自立と早期退職」という2つの目標のうち、後半の「RE」は、できるだけ早く仕事を辞めて、その後に年金生活や金融資産の取り崩し生活に入ることではない。

正しい意味は「イヤな仕事から早く離れ」、
そのあとは好きな事を仕事にして、
生涯現役で必要十分なだけの収入を得ることではないかと考えている。

FIREのREとは何か

「好きなことを仕事にして、収入が得られるはずがない」と考える人もいると思う。

「俺はイヤな職場で定年まで我慢しているんだ」と反発するかもしれないが、その考えは少し視野が狭い。

情報革命やAI革命の影響

情報革命やAI革命により世の中は大きく変わったわけだから、「好きなことを仕事にして収入を得ることができる」という可能性を見いだすべきだと思う。

スマホやSNSの登場で世の中が変わったのか、20世紀と21世紀の境目だったのか、
あるいはコロナだったのかわからないが、
とにかく世の中は劇的に変化した。

もちろん「好きなこと」にもいろいろな種類があるので、全てが収入を得られる仕事に結びつくとは限らないが、頭ごなしに「そんな事は無理」と決めつける必要はない。

プラス思考や前向き思考で「好きなことを仕事にしよう」という自己啓発的な話ではなく、そうしなければ生きていけないという残酷な事実がある。

橘玲の「裏道を行け」第5章には
「絶望の理由は貧困ではなく失業」
と書いてある。

中高年の雇用問題と 生涯現役の必要性

アメリカの中高年の白人労働者階級の中で、
アルコールやドラッグ中毒による絶望死が増えているというのだ。

グローバル化や情報革命・AI革命により、
単純労働は次々と新興国やロボットに奪われ、
仕事を失った中高年は社会からも見放されて絶望死に至るのだ。

これは人ごとではなく、空前の人手不足と言われる日本でも同じことが起きるに違いない。

いま現在の人手不足は、
「人手を要する仕事が多いから」
生じている現象であり、
旧態依然たる20世紀型企業が淘汰され、
生き残った企業が機械化・自動化を進めれば、やがて人手不足が解消される。

そうなればスキルを持たない中高年は仕事を失うことになるので、
アメリカと同じように絶望死が増えることも充分予想される。

そうではなく「好きなことを仕事にして、生涯現役で長く働く」というビジネスモデルを手に入れれば失業も老後問題も発生しない。

「お金を貯めてFIRE」派の人たちが見落としがちの点が2つある。

「お金を貯めてFIRE」の 落とし穴と現実

1つは、インフレが始まった以上、
これまでのような低金利・デフレを前提にしたライフプランは通用しないということだ。

円安とインフレ、そしてこれまで繰り返し発生してきた金融危機を振り返ってみると、
米国株(ETF)を長期で定期購入していれば誰でも簡単に年率15%から20%の運用が可能などという時代が続く事はありえない。

もう一つの大切な視点は、資産の評価益が増えたとしても、インフレによる目減りを考た実質利回りで考えなければならないということだ。

配当利回り10%といっても、インフレ率が5%なら実質利回りは5%に過ぎない。

「お金を貯めてFIRE」の人たちの金科玉条となっている4%取り崩し議論を年率4~8%のインフレを前提にシミュレーションし直して見ると、
恐ろしい事実に気づくことになる。

だから完全FIREとか完全リタイアという考えはあり得ず、
生涯現役こそが唯一の生き残る戦略になるのだ。