バンコク物価上昇の実態と影響

バンコクの物価上昇が勢いを増している。

物価上昇率は5%前後だが、肌感覚としては、
それよりもかなり高くなっている。

バンコクの急速な物価上昇

2018年から2023年までの5年間で見ると、
公表されている数字だけで15%ほど物価が上昇している。

日本人から見れば円安の影響が加わるので、
肌感覚も何もあったものではなく、
円建ての物価は上昇率は相当なものだ。

しかし現地に住む欧米人の友だちの話でも、
「高くなった」というのが共通の意見だ。

東南アジア各国の経済成長は力強く、
特にタイ、ベトナム、インドネシアの3国は、
相当の勢いで経済発展を続けている。

だから物価高が進むのは当たり前で、
1960年代から70年代の日本を見ればよくわかる。

5年間で15%という数字は、
いわゆる消費者物価指数の上昇率であり、
タイ全体の平均値なので、
都市部での物価上昇率はこれよりも高い。

円安が日本人に与える影響

日本でも地方都市と東京や大阪では物価が違うように、タイではバンコクと地方都市では物価の上昇率も違ってくる。

さらに同じバンコク市内でも、
中心部と周辺部では物価が違う。

日本人が多く住むプロンポン地区などは高級住宅街なので、レストランやカフェの金額にしても、和食レストランにしても、5年間の物価上昇率は15%では収まらない。

外国人価格の上昇と 通貨価値の変動

これらの価格よりも、もっと上がっているのがいわゆる外国人価格だ。

過去5年間で見た場合、通貨別で円に対して最も上昇率が高いのはドルであり、
次にユーロや中国人民元が続き、
その次が現地通貨のバーツだ。

だから日本円から見ると、
ドル建て価格やユーロ建て価格、
人民元建て価格が凄まじい勢いで上昇しているのだ。

当たり前の話だが、タイ国内での価格表示はバーツで表示されており、
アメリカ人は1000バーツ34ドルと計算し、
日本人は1000バーツ4200円と計算する。

この価格が高いかどうかは別にして、
アメリカ人から見れば、アメリカ国内の価格と比べるだろうし、日本人は日本国内の価格と比べて高いか安いかを判断する。

このブログでも何回か書いたが、
それぞれの国の物価水準を比較するときに、
その国の大卒初任給を使うとわかりやすい。

アメリカの大卒初任給は日本の2.5倍と言われているので、簡単に言えばアメリカ人は日本人の2.5倍金持ちなのだ。

だから1000バーツが34ドルと4200円だとしても、それを高い安いかと判断する基準は大きく違う。

東南アジア経済の成長と 物価上昇の関係

東南アジアでは日本の居酒屋がブームになっており、日本人経営で、ちゃんとした料理を出す店では一人当たりの客単価は1万円を超える。

予算が1000バーツであれば、軽くビールや焼酎を飲んで、お刺身と焼鳥くらいなら食べることができる。

これが「4200円」の実力だ。

ところが、収入が2.5倍のアメリカ人から見れば、単純計算では1700円となるわけだから、「めちゃくちゃ安い」という感覚になる。

こういった金持ちの旅行者が増えてくると、
ホテルやレストランはそれに見合った価格設定をするので、
外国人価格がどんどん上昇することになる。

タイの現地通貨を基準に考えると、
コロナを挟んだ5年間で
円の価格は大きく下落した。

一方ではドルの価格は大きく上昇した。

これによって欧米人が客の中心であるホテルやレストランの価格帯は、我々日本人には少し敷居の高いものとなった。

私がコロナ前に民泊ホテルを経営していた
アソーク地区はバンコクのど真ん中だが、
近くにはヒルトンやウェスティン、ハイアットリージェンシーなどの高級ホテルが並んでいる。

こういったホテルの最低価格は1泊7000バーツが相場だから、周辺のレストランやバーは、この価格で宿泊する客を対象にした価格となる。

もちろん周囲には2000バーツ以下で泊まれる安いホテルもたくさんあるが、最近では高級ホテルがどんどん開業している。

アメリカから見れば、地球の裏側にあたる東南アジアだが、インターネットの普及や移動手段の多様化などにより、距離の壁はどんどんと低くなっている。

それに加えて、ここ数年の異常気象により、
熱帯に位置する東南アジアが「避暑地」に選ばれているという驚くべき事実があるのだ。

こうなってくると、「物価の安い東南アジア」というイメージを変更しなければならないかもしれない。

東南アジアの中ではシンガポールだけは別格に物価水準が高いが、
やがてバンコクもそれに似た状況になるかもしれない。