シェムリアップの民泊海外起業塾を企画

シェムリアップという街はアンコールワットしかない小さな街だが、
世界中から観光客が集まる超有名都市なので、民泊経営という面では非常に魅力的だった。

前回も書いたが、初めて泊まったのは淳太郎君という青年がやっている民泊物件だった。

日本から大学生のインターンも来てていて、
いつも2、3人の学生が掃除をしたり、
ゲストの世話をしたりしていた。

就職活動中の大学生にとっては、
海外でのインターンシップ経験というのは、
履歴書を書く上で非常に魅力的だったと思う。

コロナ前にはLCCが若い人たちの海外旅行の足として定着していたから、
海外で働いてみたいとか、
いつかは海外で起業してみたいという学生が来ていたようだ。

食費は自己負担だが宿泊費は無料、
その代わり午前中だけ働いて、
午後は自由行動というスケジュールで、
学生にとっても良い条件だったに違いない。

カンボジア人の人件費は非常に安く、
英語ができない軽作業だけの中年女性の半日パートなら1ヵ月100ドルで雇うことができた。

ただいくら安いとは言え、
人件費を支払うことには間違いなく、
それに比べればインターンシップの学生の「人件費ゼロ」は魅力的だ。

海外起業塾を企画した、シェムリアップのブティックホテル。どんなホテルでもプール付きだ。

仕事は清掃やシーツ交換などの軽作業だし、
外国人の通訳や空港への送り迎えなど、
短期間なら学生にも面白い仕事だったと思う。

海外起業ノウハウを学ぶ短期合宿

私にシェムリアップを紹介してくれた友人が、インターンシップに興味を持ち、

「純太郎君が持っているエアビーのノウハウを売り物にすれば、海外起業塾みたいなビジネスが成り立つんじゃないか」

と提案してきた。

企画内容は「海外起業ノウハウを学ぶ短期合宿」みたいなイメージで、

朝食付の宿泊費が無料で、ノウハウを学ぶための受講料を支払ってもらうというものだった。

海外で起業したいという若者も多いし、
中高年でもセミリタイアを考えている人たちがいる事は間違いないので、
それなりに面白い企画だと思った。

そのうちに友人と淳太郎くんの2人で企画を立て、実際に募集を始めることになった。

狙い通り、日本人男性が応募

どんな媒体で募集を掛けたのかは忘れたが、
1ヵ月もしないうちに40代半ばの日本人男性が応募してきた。

コースは2週間で、受講料は4万円か5万円だったと思う。

当時、その物件では1泊朝食付で2800円位で提供していたので、どちらにとっても金銭的には損も得もないような内容だったが、

学生よりはしっかりした大人を2週間雇うことができるという筋書きだった。

私たちは、その受講生をドングリ君というニックネームで呼んでいた。

なぜそう呼んでいたかを書き出すと個人情報に触れたり何かと差し障りがあるので、
これ以上は書かないことにする。

ドングリ君は自称SEと言っていたが、
多少その世界に詳しい私の質問にはしどろもどろだったので、
本当の経歴だったのかどうかはわからない。

どちらかと言えば、明るくない(暗い?)性格だったが、仕事は黙々とこなしてくれた。

ドングリ君、突然の退学

最初はかなり前向きで、
3日目か4日目に新しい学生のインターンが来たので、
「先輩として、少し挨拶してください」とお願いしたら、まるで中学か高校の校長先生のような口調で喋り始めたのには驚いた。

変化が現れたのは1週間目位からで、
朝の仕事の時間になっても出てこなくなり、

理由を聞くと、「蚊が多くて寝れなかった」
「暑いので体調が悪い」で始まり、

10日目位にメモ用紙を半分に切ったような紙に

「お世話になりました。日本に帰ろうと思います」と書き置きを残して消えていった。

まあ海外アルアルの話なのだが、
起業を目指すにしては少し軟弱などんぐり君であった。