旅の醍醐味:歴史的な建物と映画の世界

故・坂本龍一の名作・ラストエンペラーで有名になった満州国の舞台は中国東北部だ。

日本が勝手に作った傀儡国家だから、
住んでいる中国の人たちは腹立たしいと思う。

だが満州国があったのは歴史的な事実だ。

満州国の歴史と長春(旧満州国首都・新京)

2013年に旧・満州国の首都だった長春(旧 ・新京)を訪れた時は、とにかく驚くことの連続だった。

人口1千万人(現在)の大都市の中心部を南北に貫く10kmの直線道路(人民大街、旧・大同大街)や、
かつての満州国皇帝の広大な皇居予定地など、驚くことばかりだった。

いまの日本で言えば霞ヶ関にあたる、当時の官公庁が立ち並ぶ地域の建物は、
すべて当時のものが保存されている。

偽満州国八大部遺跡:交通部(運輸省?)

吉林大学や国家安全局を始め、多くの官公庁として今でも使われているが、
その保存状態の良さには驚くばかりだった。

こういった歴史を刻んだ都市を訪れるのも、
旅の醍醐味の1つだ。

実体験が映画や書籍とのつながる瞬間

歴史的な建物や文物に触れることもそうだが、
何よりも日本に戻ってから、映画や書籍などで、

「あっ、ここには行ったことがある」
「ああ、この建物はあの時の場所か」

という体験は桁違いに感動するものだ。

Netflixでドラマを見ている時でも、
自分が行ったことのある場所が出てくると、

「あー、これは〇〇で、この先に○○が」

と映像に没入してしまう。

中国の歴史が好きな人は誰でも知っているが、
中国ドラマには科挙の歴史が欠かせない。

瀋陽故宮と科挙制度

1300年間も続いた科挙制度には状元という最終試験の首席に与えられる称号がある。

長春から大連に向かう途中、両都市の中間にある瀋陽(旧。奉天)を訪れたのだが、

ガイドさんが、「状元さんだけが通ることの出来る特別な門」に連れて行ってもらった。

現在、中国に3つある残っている故宮のうち、最も古い瀋陽故宮の中にある、通常は皇帝だけが通ることの出来る中門だが、合格発表の時だけは、首席の状元を含む上位3名だけが通行を許可されたのだそうだ。

余談になるが、故宮というのは歴代の皇帝が集めた文化財を展示する博物館で、

20世紀初頭の清朝の没落から辛亥革命、
満州帝国復辟などの複雑な歴史を経て、
同じ名前の博物館が中国に3つ存在している。

その時はよく知らなかったのだが、
中国の歴史ドラマがブームとなってからは、
自分の経験がもの凄く貴重なものに思えて、
周りの人に対してもハナが高かった。

ドラマの中で「科挙に合格した偉い人」という場面が出れば、すかさず、
「状元だけが通れる門を潜ったことがある」

という自慢話ができる。

ローコストライフと旅の価値

こういった体験をすると、日本にいて同じ映画や同じ書籍を読む時でも、喜び具合とか感動の度合いが違ってくる。

インタラクティブとか双方向というのとは少し違うのかもしれないが、
本や映画に没入できる感覚は桁違いだ。

こういう状況が出来上がることで、
日本国内にいる時は、

「別においしいものを食べなくても、贅沢をしなくても、本と映画さえあればいい」

という状態になる。

これも私が実践しているローコストライフの大きな要素だと思っている。