海外生活史上、最大の焦り

日本と海外の往復をしていると、飛行機の乗り方やホテルの選び方など、
あまり旅に出ることが少ない人から見れば、相当に旅慣れて見えると思う。
心配性なので、最初の頃は入国審査や荷物検査はものすごいストレスだった。
それでも、いまは空港での搭乗手続きや出国審査等でも、ほとんど慌てる事はなくなった。

海外生活史上、最大の焦り

ただ、コロナのときには、「海外生活史上、最大の焦り」を経験した。

それは2020年3月のことで、タイのドンムアン空港での事だった。

ドンムアン空港は、日本で言えば羽田空港のようなもので、
もともとバンコクにはこの空港しかなかったが、

20年ほど前に成田空港に匹敵するスワンナプーム国際空港ができたので、
現在のドンムアン空港は国内線がメインだ。

ドンムアン空港は羽田空港のようなもの

国内線の便数は日本ほど多くないが、
その分、インドシナ半島のど真ん中というバンコクの立地から、
周辺のベトナムやラオスや・カンボジア、さらにはマレーシア・シンガポールなどへの便がたくさん飛んでいる。

この日も、私は空港のラウンジで、いつものようにゆっくりとワインを飲んでいた。

この空港には制限区域外のエリア、
すなわち安全検査や入国審査を前に、誰でも入れるエリアにラウンジがある。

制限区域外のラウンジ

私は国際線に乗る場合は、いつも4時間位前には空港に着くようにしている。

この日も渋滞がなかったため、空港には4時間前に着き、
いつもと同じようにラウンジに入った。

このラウンジはプライオリティパスが使えるので無料で利用できる。

このプライオリティパスも普通に取得すれば、
年間239ドルもの費用がかかるが、
無料で手に入れる方法もたくさんある。

食事やアルコールも完備している上に、軽食も充実しており、
お勧めの場所である。

この日はANA便ではなく、
LCCのエアアジアXのビジネスクラスを予約していたので、
いつものANAやスターアライアンス系のラウンジは使えない。

そもそもこの空港には、そういったエアラインは就航しておらず、
制限区域内にあるラウンジも航空会社専属のままではなく、
いわゆる共用ラウンジだ。

どうもカウンターの様子が変だ

1時間ほどくつろいでいた後、

「そろそろ行こうかな」

と思い、ラウンジを出た。

自宅でタクシーに乗る前に、出発便の時刻の変更がないことを確認していたので、ゆっくりと歩いて行った。

ところが、どうも様子が変なのだ。

いつもはエアアジアのカウンター付近には
何本もの長蛇の列ができており、

その列をかき分けながらビジネスクラス専用の「レッドカーペット」のカウンターに並ぶのが定番のパターンだった。

まぁ、レッドカーペットなんかはいらないのだが、
並ばずにチェックインができるのは何よりの特典だ。

いつもの長蛇の列がない

しかし、長蛇の列がないばかりではなく、
いつも大混雑しているドンムアン空港のロビーが、
いつもよりも慌ただしい雰囲気なのだ。

出発時刻を知らせる電光ボードに目をやると、
ずらりとキャンセルの文字。

慌てて係員に尋ねると、
投げやりに「全部キャンセル」と答える。

さすがにこの時は焦った。

コロナが拡がっtいる事は分かっていたが、
まさかここまで早く、その波がバンコクにまで押し寄せてくるとは思わなかった。

しかし、自分で言うのもなんだが、
ここからの行動は素早かった。

ノックスクートのチケットをゲット

すぐに空港内のエアチケットカウンターを探し、
まだ飛んでいる飛行機会社を探した。

幸いなことに、ノックスクートエアという航空会社のカウンターが空いており、
数人の客が並んでいた。

おそらく、私が乗る便も、その他の便も、キャンセルは直前に決まったのだろう、
まだあまり人も並んでおらず、2人持ち位でチケットを買うことができた。

チケットを買い終わってからしばらくすると、
そのチケットカウンターにはどんどん列が伸び、
やがて長蛇の列となった。

この時、生まれて初めて空港カウンターで航空券を買うという経験をした。

このノックスクートエアにはLCCビジネスの設定はないが、
ラッキーなことに、ANA国内線のプレミアムクラスのように、
足元がかなり広い座席が用意してあった。

スクートPlusの座席 (スクート公式サイトから引用)

この席を取ることができたので、
久しぶりのエコノミークラスだったが、
全く問題なくくつろぐことができた。

コロナの影響で、突然に全便がフライトキャンセルになるなどという事態はめったに起きないだろうし、これからも遭遇する事は多分ないだろう。

キャンセルを知った瞬間は焦ったが、
その後に機内で落ち着いてみると、

「まぁ、これも良い経験だった」、
「経験という宝物を手にした」

と自分を納得させたものだった。