機上での滅多にないドラマの体験

私は飛行機に乗るのが大好きで、
マイルがたくさん貯まるおかげで、
好きなだけ飛行機に乗れる今の生活には大満足している。

マイルを活用した飛行機の旅

2011年7月から2020年3月まで、ほぼ毎月のように日本と海外を往復しており、
仕事や体調不良などで出ない月もあったが、
トータルでの渡航回数は100回近くになる。

コロナが始まってからは年に4〜5回に回数を減らしたが、海外での乗り継ぎ便や国内線の搭乗と合わせれば、飛行機の中で過ごした時間は何百時間になるのか数えることもできない。

これだけ飛行機に乗っていると、
色々と面白い場面に出くわすことがある。

フライト経験と特別な体験

ビジネスクラスを予約していたのにファーストクラスにアップグレードしてもらったこともあるし、コロナの時にはB787のビジネスクラス48席を貸し切りにしたこともある。

もちろん本当に貸切にしたわけではなく、
偶然にも登場客が私1人だったという話だ。

こういった嬉しい話だけではなく、
ときには怖い場面に遭遇することもある。

驚きの出来事と緊急事態

2018年の6月にバンコクから成田に向かうタイライオンエアというLCCに乗っていた時のことで、アル中(?)の男が酒に酔っ払って騒ぎ出し、飛行機のドアを開けようとしたのだ。

シートは横に2席-2席-2席が縦に4列で、
24席のうち4〜5席ほどが空いていた。

まん中の列の右側がわたしの定位置で、
その男は左側の列の窓際に座っていた。

最初は、時々私の座席に近づいてきて、
何かワケのわからない話をしてくるので、
適当に相槌を打っていた。

この時の登場人物が面白く、
アル中男の他に日本のヤクザお二人と
警察官(空港のセキュリティポリス)が同乗していた。

空の旅の予期せぬドラマ

私の右側にはインド系タイ人と思われるガッシリとした体格の警官が座っており、
その前の座席にヤクザの兄貴分の男性、
1つ置いて右側最前列に弟分が座っていた。

アル中の男が飲みすぎるので、最初は女性のキャビンアテンダントが注意して、男が持参していた酒瓶を取り上げた。

最初はおとなしく言うことを聞いていて、
機内をウロウロしながら、
私の右斜め前のヤクザの兄貴分の席に行き、
何かを話し始めた。

60代半ば位の兄貴分は穏やかな様子で
20分位も男の話を聞いていた。

喋り終わると、男はまた機内をうろつき始め、何回も「酒を返せ、酒を返せ」と騒ぐので、
次には男性の CAが男を威圧するような形で注意を始めた。

それが30分ぐらい繰り返されたあと、
突然に男が何か叫びながら前方に走り出し、
つい飛行機のドアに手をかけた。

その時、私の隣に座っていたインド系タイ人の空港警官がスクっと立ち上がり、
目にも止まらぬ速さで前方のドアに駆けより、
制止しようとしていた女性CAを引き離し、
一気に床の上に押さえつけた。

これは映画のようにカッコよかった。

その後、男は席に戻され、
着陸まで男性CAの監視の下に置かれた。

私の隣に戻ってきた男性に、
「どうもありがとうございました」
とお礼を言うと、
彼は「私は空港のセキュリティポリスなので、こういった訓練をしていました」と答えてくれた。

やがて飛行機は無事に成田に到着し、
いつものようにシートベルト着用サインが消えた。

男はまだ動けない状態で座っていたが、
私たちは普通に荷物を下ろし始め通路に並んでいると、日本語のできるCAが、「今日はドアが開くまで、いつもより少しお時間がかかります」と伝えてくれた。

通路では私の前には兄貴分が、
そのすぐ前に弟分が並んでいた。

この時、ドアの脇の窓から入り口付近に空港の警察官が並んでいるのが見えた。

兄貴分の男性が顎で「警察が並んでいる」と窓の外を示すと、弟分の男性が不安そうな目で、
「兄貴ぃ、俺たちやナイやろなぁ?」
と関西弁で言ったのがハッキリと聞こえた。

服装やそれまでの身のこなし方などから、
そのスジの方だろうと思っていたのだが、
この時に「ヤッパリ」と確信した。

そして私は、恐る恐る
「男の話をよく聞いてくだり大変でしたね」
と感謝の気持ちを込めて伝えると、
「話したいだけ話をさせないとなぁ」
と答えてくれた。

この場面もカッコよかった!!

ドアが開き警察官が入ってきて、
男は私たちよりも先に連行されていった。

そして私たちが降りる番になり、
通路の途中で男が警官に囲まれている場面を見ながら、いつものようにイミグレーションのカウンターに向かって歩いて行った。

通路には警察官が何人もおり、
私の目の前にはそのスジの方がお二人いる。

こういった時の空気の張り詰め方は通常とは違い、何とも言えない緊張感が漂っていた。

私の前を手ぶらで歩くお二人との距離は、
通常なら考えられないほど近かったのだが、
それでも全く威圧感とか怖さを感じる事はなかった。

やがてエコノミー席に座っていたと思われる若者二人が、「兄貴ぃ、お疲れ様です!」と大きな荷物を担いで駆け寄ってきて後ろから駆け寄って来た。

そして、すぐ後ろを歩く私を睨み、
「そんなに近くを歩くんじゃねぇよ」
というような一瞥をくれた。

この瞬間に、私はのドラマは完全に終わった。