エリート​​海外駐在員の天国地獄

駐在員ウォッチングの魅力

海外で生活していて面白いと思うことの1つに「駐在員ウォッチング」がある。

日本株式会社の最前線で働く海外駐在員を眺めることが「面白い」などというのは非常に失礼なのだが、
なぜ面白いかと言えば、彼らが間違いなく「ハイレベルのエリートたち」だからだ。

海外駐在員の階層と生活

海外で働く日本人の社会には厳然たる序列があり、大手・準大手の駐在員がトップレベルで、その次に中堅企業、その下にこれらの企業の下請け企業の駐在員が位置している。

大手・準大手のように現地本社があるようなレベルから、小さなレンタルオフィスに駐在員が1人だけというケースまで様々だ。

それらの企業の中でも、本社採用の駐在員と現地採用社員では、給与待遇だけではなく、本人たちのプライドなどでも天と地ほどの差がある。

円安やインフレで苦しむ日本経済が何とか保たれているのは、彼らのような企業戦士たちが頑張っているからだ。

タイやインドネシアでは、
どんな田舎に行ってもトヨタやホンダ、スズキやいすゞの営業所や修理工場がある。

競争とストレスに晒される 駐在員たち

日本人駐在員が常駐しているわけではないが、
定期的に巡回したり、会議を重ねたりと、
何万人もの海外駐在員が活躍している。

クルマ産業だけではなく、味の素や明治などの食品も大きな存在感を示している。

彼らはエリートであるだけに常に激しい競争にさらされており、
現地で良い成績を上げて本社に凱旋する駐在員もいれば、その反対のケースもあるだろう。

2:8の法則が当てはまるかどうかわからないが、大勢の駐在員の2割位は「失意のまま帰国」というケースもあると思う。

企業戦士たちが出世競争に神経をすり減らすのは国内も同じだが、
海外の場合は生活のストレスが大きいので、
仕事がうまくいかなかったり現地スタッフとのトラブルを抱えたりする場合には、
そのストレスは半端ではない。

海外生活の限られた 息抜きの場所と制約

日本国内にいる場合は目立たないような居酒屋とか、場末のキャバクラで息抜きをすることもできるだろうが、海外ではそうもいかない。

日本人駐在員や駐妻(駐在員の妻)の行動範囲は案外と狭く、日本人向けスーパーやカラオケ店、駐在員御用達のレストランなど、
限られた場所での生活を強いられている。

これらは本社が決めた厳密なルールであり、
企業戦士は絶対服従しなければならない。

宗教や生活習慣の違いから、日本では問題にならないような小さなトラブルでも、海外では大きな問題になることもある。

そして、今のようにソーシャルメディアでの炎上が、場合によっては企業生命を左右するような時代には、
「とにかく危ない事は一切避ける」
と考えているのだと思う。

私のようにセミリタイアで好き放題な生活をしている人間から見ると「かわいそうだなぁ」と思ってしまう。

週末になると日本人向けスーパーでは典型的な駐在員夫婦が何組も買い物に訪れる。

彼らの服装や雰囲気は殆ど同じで、
誰が見ても一目で駐在員夫婦とわかる。

エリート社員だから給与も高く、
30代半ば位でも運転手付きの車が支給され、
プール付きの高級コンドミニアムには現地人のメイドがいる言う理想的な生活環境なのだが、
その中の2割位の人たちはケタ外れのストレスに苛まれているわけだ。