ホーチミンで辿る近藤紘一の足跡

■春節のホーチミンで

2025年の春節の時、私はホーチミンにいた。

街は賑やかで、色とりどりのカラフルなアオザイをまとった人たちが街に溢れており、ちょうど1週間前に地下鉄が開業したばかりで、経済成長の象徴と若々しい活気の典型的な賑やかさだった。

■近藤紘一の足跡を辿って

今回のミッションはジャーナリストの故・近藤紘一の足跡をたどるというもので、マジェスティックホテルやカラベルホテルのあたりを歩き回った。

近藤紘一の「サイゴンの1番長い日」は1980年代のベストセラーとなり、年配の方々には熱烈なファンが多い。

この作品は、1975年4月30日のベトナム戦争最終日のドキュメンタリーだ。ある年齢以上の世代は、大使館の屋上からヘリコプターの縄梯子に殺到して、逃げ惑うアメリカ人の写真を知らない人はいない。

この時に近藤紘一がたびたび取材や原稿書きに訪れていたのがマジェスティックホテルだ。

そして北ベトナムの解放軍が突入してきた後に、日本に帰るか、現地にとどまるかの決断を迫られたとき、一切の機能が停止して街全体がパニックに陥っていた中で、偶然にも泊まることができたのがカラベルホテルだ。

近藤紘一ファンにとっては、この2つのホテルは絶対に訪れてみたい聖地なのだ。

■歴史と現代の交差点

カラベルホテルのすぐ前にはオペラハウスがあり、ここに地下鉄のオペラハウス駅ができた。

フランス統治の時代が長かったため、道路や建物だけではなく、オペラハウスなども、さすがに東洋のパリと呼ばれた面影を残すものだ。

プノンペンやビエンチャンもそうだが、街を歩いていると、上海のフランス租界のように、とにかく植栽が美しい。

こういった町並みから見ると、日本の大都市が極端に貧弱に見えるので悲しくなる。

■新しい地下鉄への期待

春節ということもあって、開通したばかりの地下鉄は賑わっていた。

郊外から出てきた家族たちが着飾っている様子が、経済の活気を物語っていた。

体型や顔立ちなどは、中国やタイと比べると、日本人に近いので、そういった意味でも親近感が湧くのかもしれない。

この路線図にあるように、ホーチミン市の将来構想は壮大なものがある。

バンコクに長く住んでいるアイルランド人に見てもらったところ、「20年前のバンコクと同じだ」と言っていた。

今回開通した地下鉄は、この路線図の中のわずか1路線の一部だが、最近のベトナム経済の発展ぶりを見ると、20年もかからずに、半分以上の路線が開通するのではないかと思う。

■経済発展と大気汚染

しかし、経済発展に伴う大気汚染などの弊害も深刻な問題だ。ここ数年、バンコクでは大気汚染がひどく、同じ日で調べてみると、ホーチミンの方がPM2.5指数は3割ほど低い日が多い。

円安や物価高だけではなく大気汚染のことも考えると、数年後には、私の海外拠点もバンコクからホーチミンに比重を移しているかもしれないが、大気汚染を追いかけるのだけはやめてほしい。