4%理論の落とし穴|完全FIRE実現を妨げる心理的リスク

4%理論への懐疑的視点

FIREを目指す人で4%理論を知らない人はいないと思うが、私はその実効性には懐疑的だ。

なぜならばインフレによる影響を軽視しているからだ。

一般的な4%理論はインフレ率を3%と見込み、運用利回りを7%と仮定するケースが多い。

インフレで元本が目減りするので、収益のうちからインフレ相当分を元本に補填し、元本の実質的な目減りを防ぐという考え方だ。

長期予測の不確実性

例えば45歳でFIREを達成したと仮定しよう。

その準備期間が10年、そしてFIRE後の人生が40年と仮定する。

この50年間の間、毎年一定のインフレ率で、一定の運用利回りが得られる確率は間違いなくゼロだ。

インフレ率も投資環境も常に変化するので、統計的な数字は実際の人生においては役に立たない。

複利効果がもたらすリスク

そして最も重要なことは、インフレにせよ運用にせよ、これらは複利で働くということだ。

例えば10年間の平均でインフレ率が平均3%だったとしても、1年ごとに数字が変わってくるから、様々なケースが考えられる。

最初の数年間で高いインフレ率が続き、元本の実質価値が低下していった場合には、その後の運用成績が大きく変わる。

メンタル面での課題

そういった時に、最も大事なことは様々なシミュレーションを行うことではなく、「どんな状況にでも耐えられる鋼のようなメンタル」を保つことだ。

これは非常に難しいことで、完全FIREで稼げる力(人的資本)がなくなってしまえば、よほど強靭な精神力の人でなければ耐えられないだろう。

人間はいちど手にした幸せや豊かな生活を失うことを極端に恐れる。

そういった場合のメンタルの乱れ方は半端なものではないし、その後も淡々とFIRE生活を続けられる人はおそらくいないと思う。

だから私は「金融資産を積み上げて仕事を辞める」という完全FIREは理論的に不可能だと考えている。