AI時代における個人の専門性
AI技術の急速な発展により、多くの仕事が自動化され、多くの職を奪うと言われている。
2034年頃には、現在の仕事の相当部分がAIに置き換わると予測されている。この変化はセミリタイアを目指す我々にとって脅威なのか、それともチャンスなのだろうか。
結論から言えば、これは大きな機会だ。
AIが定型作業を代行することで、人間はより創造的で価値の高い仕事に集中できるようになる。個人の専門性や経験が、これまで以上に重要になるのだ。
特に40代以上の我々が持つ「人生経験」や「業界知識」は、AIには容易に代替できない価値だ。
若手の技術力にAIがサポートを加えても、長年の経験に基づく判断力や人間関係構築能力は、依然として人間にしかできない領域だ。
この人間関係が、先々にわたり、大きな収入源となる。
どういうことかと言うと、自分の知識や経験を、それを知らない人や求めている人に伝えることがマネタイズになるからだ。これはまた、後々詳しく説明しよう。
AI時代における個人の専門性は「深さ」と「幅」の両方が重要になる。
一つの分野で深い専門知識を持ちながら、他の分野にも見識を広げる「T字型人材」が求められる。セミリタイア期間は、この専門性を磨き、拡張するための絶好の機会だ。
また、AIを使いこなす能力も新しい専門性の一つになる。
AIに仕事を奪われるのではなく、AIを道具として活用し、生産性を高める人材になることが重要だ。中小企業のデジタル化支援などは、この分野での典型的なビジネス機会だ。
従来のFIREとセミリタイアの違い
従来のFIRE(FinancialIndependence,RetireEarly)は、「経済的独立と早期退職」を目標とする。
年間支出の25倍の資産を蓄積し、4%ルールに従って取り崩すことで、働かずに生活するというモデルだ。
しかし、このモデルには現実的な問題がある。
まず、必要な資産額が大きすぎることだ。年間支出300万円なら7500万円、500万円なら1億2500万円の資産が必要になる。
これを40代で達成するのは、一部の高収入の職業を除けば非現実的だ。
また、4%ルールも万能ではない。インフレ率が高い時期や、市場が長期下落局面にある時期では資産の取り崩しペースが早まり、資金枯渇のリスクが高まる。

特に日本のような低成長・低金利環境では、4%の運用利回りを維持することも困難だ。
さらに重要なのは、完全に働かない生活が本当に理想的なのかという根本的な疑問だ。多くのFIRE実践者が、退職後に「やることがない」「社会との接点がない」という悩みを抱えることが報告されている。
セミリタイアは、これらの問題を解決する現実的な選択肢だ。必要な資産額は従来FIREの半分以下で済む。継続的な収入があることで、市場変動リスクも軽減される。そして何より、社会との関わりを保ちながら自由な時間も確保できる。
セミリタイアでは「働く量」をコントロールすることが核心だ。フルタイムからパートタイムへ、正社員からフリーランスへ、都心から地方・海外へ。様々な調整により、労働時間を減らしながら最低限の必要な収入は確保する。
完全引退の罠を避ける方法
完全引退には、経済的リスク以外にも様々な「罠」が潜んでいる。これらを理解し、適切に回避することがセミリタイア成功の鍵だ。
最大の罠は「目的の喪失」だ。長年仕事を中心に生活してきた人が、突然すべての責任から解放されると、何をして良いかわからなくなる。最初は開放感があっても、時間が経つにつれて空虚感や無力感に襲われることが多い。
次に「社会的孤立」の罠がある。職場での人間関係がなくなり、社会的な役割を失うことで、孤独感を強める人が多い。特に男性の場合、職場以外の人間関係が希薄な傾向があり、この問題は深刻だ。
「健康悪化」の罠も見逃せない。適度なストレスや刺激がなくなることで、身体機能や認知機能が低下するリスクがある。「使わない機能は衰える」という原則は脳にも当てはまる。
経済面の罠は「インフレ」だ。固定収入に依存していると、物価上昇に対応できなくなる。特に医療費や介護費は一般的なインフレ率を上回って上昇する傾向がある。
段階的引退と複数収入源の確保
これらの罠を避けるためには、「段階的な引退」が有効だ。いきなり完全引退するのではなく、労働時間を徐々に減らし、新しい活動を徐々に増やしていく。この過程で、自分に合ったセミリタイアのスタイルを見つけることができる。
また、「複数の収入源」を確保することも重要だ。年金、投資収益、パートタイム収入、コンサルティング収入など、リスクを分散した収入ポートフォリオを構築する。一つの収入源に依存しないことで、経済的な安定性が高まる。
最も重要なのは、「人生の目的」を再定義することだ。会社での成功や昇進が目的だった人生から、自分らしい生き方や社会貢献が目的の人生へ。この転換ができれば、セミリタイアは単なる「早期退職」ではなく、「人生の新章の始まり」になるのだ。

