外国人観光客急増で変わる日本の価格構造と階層化

オーバーツーリズムの「嬉しい悲鳴」

日本のインバウンド需要が盛り上がり、各地でオーバーツーリズムの弊害が問題となっている。

とは言え、想定以上の観光客が殺到するという事は嬉しい誤算であり、決して悪いことではない。

解決策は簡単で、ホテルでも、レストランでも観光客特別料金を設定すれば問題は片付いてしまう。

日本人がバスや電車に乗れなくなるなど、インフラの問題もあるが、いずれにせよ「客が来なくて、閑古鳥が泣いている」という問題ではなく、お客さんが多すぎて困るという嬉しい悲鳴なのだから、解決策は必ずある。

広がる「外国人価格」と事実上の「外国人特化」エリア

しかし、問題はその後だ。

例えばスキー客が殺到している北海道では、スキー場のカレーは3000円とか普通のホテルや民宿の周りでもラーメンは2000円などの観光地価格が普通のようだ。

東京都内のホテルでも1泊10万円などのホテルが常に稼働率100%だそうだが、「1泊100,000円て、誰が泊まるんだろう?」「欧米の超富裕層に違いない」と日本人には縁のない話だが、実はそれが海外では標準だ。

アメリカでは年収3000万円以下は中所得層、年収1500万円以下は低所得層に分類されているそうだ。

年収3000万円の高所得層から見れば、1泊10万円は感覚的に2~3万円程度なので、「ごく普通のホテル」ということになる。

こういったホテルは、普通の日本人には縁がないから、事実上の「日本人立ち入り禁止」エリアとなり、言葉を変えれば、外国人特区あるいは外国人租界ということになる。

 

外国人富裕層にとって「安い国・日本」の現実

日本は欧米人や金髪に弱いので、これまでは特に問題にもならなかったが、いま実際に泊まっている人たちは中国・韓国を始めとする東アジアの富裕層もたくさんいる。

そういったホテルや、そういった人たちが動き回る観光地や飲食店などでは、日本人が「上得意様にペコペコする」姿は経済合理性から見て当たり前のことだ。

何しろ日本は「安い国」なのだ。

ホテルやレストラン、高級寿司店など、今はまだ限定的なエリアだが、最近ではドラッグストアや家電量販店などでも「割高な外国人価格」を掲げた事実上の外国人特区店がたくさん生まれている。

これだけ物価が安くて、治安が良く、交通などのインフラが整っている国であれば、多くの外国人が「物価の安い日本で暮らそうかな」と考えても不思議ではない。

私が10年前に東南アジアを訪れて、「物価の安い東南アジアで暮らそうかな」と海外での低予算セミリタイア生活を計画して、それを実践しているのと全く同じことだ。

言語能力で分かれる新たな階層社会の可能性

外国人向けのスーパーやレストラン、キャッシュレスやスイカなどの交通系ICカードが日本人と同じように簡単に利用できるようになれば、外国人の長期滞在者はどんどん増えていくだろう。

そうなれば、日本人が入りにくいようなエリアがだんだんと広がり、英語や中国語のしゃべれない日本人は非常に肩身の狭い思いをすることになるだろう。

欧米人や東アジアの富裕層が日本人を「貧しい人たち」と見下すだけではなく、そういったエリアで働く英語や中国語がしゃべれることだけが特技の日本人が、そうでない日本人を見下すという、想像したくないディストピアが間近に迫っているのかもしれない。