インフレは「平均」ではなく「波」で来る
インフレの恐ろしさは、その不規則性にある。
津波のように、穏やかな時もあれば、激しく押し寄せることもある。
この波状攻撃が、FIRE生活者の資産と心理に深刻なダメージを与える。
高インフレ期には、実質的な資産価値が急速に目減りする。
仮に年率8%のインフレ下で、運用利回りが5%だった場合、実質的には年3%ずつ資産が減少していることになる。
これが3年続けば、実質的な資産価値は約9%減少する。
さらに、生活費の上昇により取り崩し額も増えるため、資産の減少スピードは加速する。
2022〜2023年、バンコクで直面した現実
2022年から2023年にかけて、私はこの現実を目の当たりにした。
タイでの食費は20%以上上昇し、特に輸入品は30%以上値上がりした。 一方、私のポートフォリオは円安の恩恵を受けたものの、現地通貨ベースでは期待したほどの成長を見せなかった。
結果として、予定より多くの資産を取り崩さざるを得なくなった。
このような状況が続くと、「このままでは資産が底をつく」という恐怖に襲われる。
頭では一時的な現象だと分かっていても、スマホに表示される数字は何倍も恐怖感を与える。
また実質3%程度なら3年間続いたとしても1割ぐらいの減少だと理解していたとしても、感情的には耐え難い不安を感じる。
これがインフレの波状攻撃の真の恐ろしさだろう。

各国のインフレ率格差は「チャンス」にもなる
しかし、視点を変えれば、インフレ率の地域差はチャンスにもなり得る。
世界各国のインフレ率は決して一様ではない。
ある国が高インフレに苦しんでいる時、別の国では比較的安定している場合も多い。
2023年のデータを見ると、アメリカのインフレ率が4%台、日本が3%台だった一方、タイは一時期6%を超えていた。
しかし、マレーシアは2%台で推移していた。
この差を利用して、生活拠点を柔軟に変更することで、インフレの影響を軽減できる。
生活拠点を「動かす」ことが最大の防衛策になる
私の知人は、この戦略を巧みに実行している。
普段はマレーシアのペナンに住み、インフレが激しい時期はベトナムやカンボジアなど、より物価の安い国に一時的に移動する。
年間の生活費を平準化することで、特定の国の高インフレの影響を薄めているのだ。
ただし、この戦略には注意点もある。
為替レートの変動、ビザの制約、生活環境の変化によるストレスなど、考慮すべき要素は多い。
単純に物価だけで判断するのではなく、総合的な生活の質を考える必要があるだろう。
場所を動かせる自由を持っていること自体が、インフレ時代のFIRE生活における、最も強力な資産のひとつだと私は考えている。
