インフレは「平均値」で語れない
インフレは目に見えない税金だと言われる。
しかし、多くのFIRE希望者は、このインフレリスクを過小評価している。
「長期的には平均4%程度のインフレだから、運用利回り7%なら実質3%の成長」といった単純な計算で満足してしまうのだ。
しかし、現実のインフレは、そんな教科書的な動きをしてくれない。
平均4%の裏に潜む「複利の恐怖」
統計の平均値ほど、実態を覆い隠すものはないだろう。
仮に20年間の平均インフレ率が4%だったとしよう。
これを聞いて、多くの人は毎年安定的に4%ずつ物価が上がるイメージを持つ。 しかし現実は全く異なる。
例えば、最初の10年間は年率1%のマイルドなインフレ、その後の5年間で年率8%の高インフレ、最後の5年間で年率6%という推移でも、20年平均は約4%になる。
問題は、この8%のインフレが続く5年間だ。
複利で計算すると、5年間で物価は約47%も上昇する。
「平均4%」という数字の裏に、こうした局所的な爆発が潜んでいる。
バンコクで目撃した「国別インフレの格差」
私が実際に経験した例を挙げよう。
2019年にバンコクで借りていたコンドミニアムの家賃は月3万バーツだった。 2023年には同じ物件が4万バーツになっていた。
4年間で33%の上昇だ。
この間、日本の物価上昇率は累計でも10%程度。
つまり、国や地域、さらには品目によって、インフレ率は大きく異なるのだ。
東南アジアに生活拠点を置いている場合、「日本のインフレ率」で計画を立てることは、そもそも前提が間違っている。
現地の物価動向と円安の複合リスクを、同時に織り込んでおく必要がある。
計画が狂うのは「平均」を信じすぎたときだ
平均値に頼った計画を立てることの危険性は、まさにここにある。

平均4%のインフレを想定して年間400万円の生活費を見込んでいても、実際に8%のインフレが3年続けば、生活費は500万円近くに跳ね上がる。
この差額をどう埋めるのか。
資産の追加取り崩しか、生活水準の引き下げか、あるいは仕事への復帰か。 いずれにしても、当初の計画は大きく狂ってしまう。
だからこそ、固定した取り崩しルールに依存するだけでなく、労働収入という可変的なバッファを持ち続けることが、インフレ時代のFIRE設計において最も現実的な防衛策になると、私は考えている。
