海外セミリタイア生活を支えるドル資産の安心感

海外生活を支える心理的安心感

私が15年間も海外でお金のかからないセミリタイア生活を送れたのは、ドル建ての資産があったからだと思う。 決して、その資産を取り崩して生活しているわけではなく、ドル建て資産が与えてくれる安心感が気持ちを支えてくれたのだと思う。

今でこそ「15年近く海外往復して」とか「10年以上も1年の半分を海外で過ごしている」などと怖いものなしのようなことを言っているが、これまでには3回ほど「このままで、本当に大丈夫だろうか」と不安になったことがある。

1度目はアベノミクスの後の急激な円安が進んだ2014年頃、2度目はコロナの渡航制限が厳しかった2020年からの2年間、そして3回目はコロナ後の円安・タイバーツ高だ。

円安と生活コントロールの限界

コロナの2年間は例外として、残りの2回は円安によるものだ。どちらの時も円安とは言え、日本に比べれば、現地の物価はかなり安く、私の持論である「日本で稼いで、安い海外で使う」という生活は十分に可能だったから、不安になる必要はなかったことになる。

しかし、こういった事は、後から振り返ってわかることで、現在進行形で円安が進んでいれば、「来月は、もっと厳しくなる」「どこまで安くなるかわからない」という不安を消すことはできない。

私は「生涯現役でゆるく長く働く」ことを目標にしているが、決して蓄えや資産が不要だと思っているわけではない。 懐具合(稼ぎ具合)に合わせて生活レベルをコントロールすることが、海外セミリタイア生活の基本だが、それにも限界がある。

最低生活固定費とリスク管理

幸い、これまで15年間、海外・国内での生活を月々の収入でまかなえなくなった事は無いが、いつ何か怪我や病気で仕事ができなくなるかもしれないし、これだけ複雑な世の中だから、何が起きるかわからない。

生活レベルのコントロールは、最低生活固定費(ミニマルライフコスト)を最後のセーフティーネットと考えている。 私が考える最低生活固定費は日本の大卒初任給の半額(2025年現在で13万円ほど)だ。

この金額でバンコクでの生活が厳しくなったら、次はホーチミン、その次はプノンペンやビエンチャンと、ノマド生活の行き先は決めてある。しかし、そうは言っても、計画通りに行動できるわけではない。

金融資産と実質価値の現実

他の所でも書いたが、金融資産から生じる配当や利子は、資産の減価償却費というメンタルもあるので、それを全て消費に回すのは非常にリスキーなことだ。

消費に回せるのはインフレ率との差分だけであって、仮に3000万円の金融資産があったとして、インフレ率が3%の場合には、果たしていくら使うことができるか考えてみると良い。

ネットで調べると「7%運用とか、8%を目指す」などと耳障りの良いことが書いてあるが、世の中そう簡単にはいかない。 100歩譲っても、高配当ETFのSPYDやVYMの4%位が限度だろう。

そうなるとインフレ率が3%と仮定しても、1%しか消費に回すことはできないのだ。
※この2つのETFは配当の他に、原資産(元本)の値上がりがあるが、それが将来続くという保証はない。

ましてや、配当や金利収入を期待する原資産が円建てとなれば、消費に回せないどころか、配当を再投資を続けたとしても、円安で資産のドル建て実質価値は年々減っていくのだ。

こんな「危ない資産」を頼りにして、リタイア生活を設計する人がいるだろうか?
私が10年以上、海外でのローコスト生活を継続できたのは、仕事がうまくいって収入があったからだけではなく、「いざとなればドル建て資産がある」という安心感があったからだ。